市議会議員 今井和夫HPへ



    兵庫県宍粟市千種町の豊かな自然に抱かれてのびのび育ったニワトリと有精卵

 
2008.6.26 No.192
あるラジオ放送を聞いて ─生産者と消費者の関係─

 先日、こちらのFM局からFM東京配信の番組が流れていたのですが、その中で、ちょっと首をかしげることをアナウンサーが言っていました。
 それは、遺伝子組み換え食品についてです。
 ●安全性が保証されていない。●アメリカ、ブラジル、アルゼンチンなどはもうほとんどが遺伝子組み換えになっている。●EUは反対している。●家畜のエサには表示義務はない。だから、間接的に、すでに日本人の口に日常的に入っている。
 とそこまでは良かったのですが、その後、
 ●これは農家の手間が省けるだけ。消費者に関係のない話で、消費者には何のメリットもない。もっと消費者のことを考えて欲しい。
 と言っていたのです。
 それはちょっとおかしいのではないでしょうか。
 遺伝子組み換えは、例えば、小麦、大豆、トウモロコシで、その種を撒いて、その会社が作る除草剤を使えばそれだけが枯れず他の草はみんな枯れたり、あるいは、その作物自体が殺虫性を持ち農薬散布回数が少なくてすむとかいうものです。
 「農家の手間が省ける」ということは、つまりは価格が安くなるということで、これは消費者の大きなメリットのはずです。
 このアナウンサーは農家のこと、作り手のことは全く眼中にないのでしょう。「農家は手間がかかっても安全な物を安く消費者に提供しなさい」そういうことでしょうか。「手間がかかっている分高く買いますから、安全な物を作って欲しい」というのなら話は分かります。
 これは、作り手と食べる側が全くつながっていないということの現れだと思います。このアナウンサーにとって食品とは店頭に並んでいるものであり、田んぼや畑で同じ人間が汗を流して作っている姿には全く想像が及ばないのでしょう。
 「いただきます」とはそのものの命に感謝していただくこと、作った人、かかわった人すべてに感謝していただくこと・・・きっと、この人たちは、そこまで食品に命を感じていないのだと思います。ホントウの意味で「いただきます」が言えてないのではと思ったりします。
 でも、それは無理のないことかもしれません。あまりにも、生産現場とかけ離れてしまった暮らし、そんな中で大きくなって、畑や田んぼに一度も入ったことがない人も多いのではないでしょうか。その方たちに農家の苦労を考えろと言っても、それはやっぱり無理なことだと思います。
 
 少し話は飛びますが、また出ましたね。食品のウソの表示が。牛肉とウナギ・・・。
 でも、私思ってしまいます。(ほとんどの食べ物を買って食べておられる皆さんには申し訳ありませんが・・・。)
 「まだまだ、まだまだ、ウソがあると思っていた方がいいのでは」と。
 これだけ、市場原理至上主義の中で、とにかく人としての道よりも、利益競争、価格競争ですべてが判断されていく世の中。「生産者と消費者の信頼はどこにいった」とかマスコミは言いますが、ちょっと虫のいい勝手な言い分に思えてなりません。
 業者をかばうわけではありません。ウソの表示をしてボロもうけしているのならばそれは言語道断です。しかし、ほとんどの場合は、そうでもしなければつぶれてしまうほど追いつめられているのではないでしょうか。
 1960年代?に始まったダイエーを象徴とする『価格破壊』。大量仕入れ大量販売による低価格実現。それで、大手量販店に人は流れ、顔の見える関係だった町の小売店はつぶれていきました。その中で、生産者はとことん買いたたかれ、あげくは外国産に持って行かれ、世界に冠たる日本の「生協」までもが同じ路線を進みました。
 そこには生産者の暮らしなど、眼中になかったのではないでしょうか。そうなれば偽装するのが生産者の自衛です。「農薬を使っていません」と顔写真入りの紙を農薬を普通に使った野菜に貼り付けて出荷する生協の生産者の話を過去に私も何度も聞いたことがあります。(今は知りませんが)
 冒頭の「消費者には全く関係のない話で・・・」も根っこは同じだと思います。今問題になっている「派遣労働」も同じではないでしょうか。人を人としてでなく使い捨ての道具として見なければあんなことはできません。「国際競争力を付けるため」「企業の利益のために」と小泉首相の時に大幅に解禁にした制度です。
 
 とにかく、もう少し農業のことを国民の皆さんに知ってもらいたい。自分の命をつなぐ食べ物を作っている現場に関心を持ってもらいたい。無関心だから、自給率がこれだけ低くても何も騒ぎにならないのでしょう。
 そして、農業だけでなく、作り手と買い手がもう少し近い関係になるようなシステムをもう一度取り戻していかなくてはならないのではないでしょうか。それは、今はやりのグローバリズムに対抗する暮らし方。いわゆる『地産地消』。これを農業だけでなくできるだけ多くの物に広げ、近くで作って近くで使う。そうすれば、生産者も作り続けることができるかもしれないし、みんなが忘れかけている大事なことを取り戻せるかもしれません。あるいは、インターネットなども使い方によるのかもしれません。
 なかなか難しいことだとは思いますが、、今からの大きなテーマだと思います。