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    兵庫県宍粟市千種町の豊かな自然に抱かれてのびのび育ったニワトリと有精卵

 
2009.11.19
田舎から子供がみんな出ていく
〜農家の直接所得補償制度議論で気になること〜

 子供がみんな出ていく〜

 町内の方と話をしていて、子供が大学で都会に出ていて、普段から「千種には帰ってくるな」と言っている。帰って来ても仕事がないからと。それで、いよいよその子が就職で「田舎に帰らなくていいと面接で言ってもいいのか?」と聞いてきたらしく、「言ってもええ」と言ったんやと。いよいよ息子が帰ってこないことが決定で、分かっていたこととはいえ、寂しさは隠せません。他にも、「遠くで就職が決まってしまった。百姓(田んぼ仕事のこと)も自分の代で終わりや」とか。ホントにそんな話ばっかりです。
 多分、千種だけの話ではないと思います。土建業がなくなって、ホントに田舎は仕事のないところになってしまいました。どんどんと田舎から若者が消えていきます。
 あと10年くらいは、田舎の道の駅や直売所で野菜が並ぶかもしれません。今、年金をもらっている人が作るからです。でも、そのあとは、もう、田舎の直売所にも野菜がなくなるでしょう。作る人がいない。
 このまま行けば、ホントに日本の田舎は荒れてしまいます。日本人が田舎を必要としていないのですから。でも、ホントにそれでいいのでしょうか。

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 農家の直接所得補償がまず米からいよいよ来年実施される様子です。この議論の中でどうも気になることがあります。

 まず一つは、これは一部農家の人だけの問題ではなく、国民みんなの問題ではないのかということ。年金問題は国民全体の問題のように報じられますが、農業も本質は同じなはず。将来のお金(年金)が入るのか、片や、将来の食料が、水が、確保されるのか。
 先日のNHKでも言ってました。「それだけ税金を農家に出すのに米の価格は下がらない。それでは消費者の利益にならないではないか」と。これには食糧確保は国民の利益という視点がありません。消費者の利益、国民の利益というのは、目先の価格だけなのでしょうか。国産で安全な食料の確保、山林・田畑の保全、…この方が、よほど大事な国民の利益だと思うのですが。

 二つめに、「やる気のある農家に支援を集中させるべき」という意見。果たして、今の農家はやる気がないのでしょうか。前にも書きましたが、ほとんどの兼業農家は、休みの日に農作業をしているのです。シーズン中はホントに休むことなく働いてやっと田んぼを維持しているのです。やる気がなくてどうしてこんなことができるでしょうか。
 一部のすごい人、恵まれた条件の土地、そんな所で大規模化を図ってやっている者だけがやる気があるのではないし、また、そんな人が日本の全ての農地をカバーすることはあり得ない。ましてや、耕作放棄地で大規模化を図るなんてことは不可能な話です。山すその作りにくい田んぼから放棄されているのです。
 「直接所得補償が出るから小さい田んぼでも手放さなくなって大規模化に逆行する」なんて言われますが、それは悪いことでしょうか。農村の人口が減らないからむしろいいことです。まずは小さい田んぼでも赤字にならない、経営が成り立つことが第一です。そうしたら、もっと増やそうと意欲が出てきます。それに田んぼは水路の管理や災害対策などの共同作業が必要で、人手がなかったら維持できないのです。
 今までの農政では大規模化した者のみを対象に助成をしてきましたが、大規模化した者ほど経営が苦しくなってきたのが現実なのです。

 また、「やる気のある農家を対象に」これは、受験勉強で100人中10番以内にだけ補助を出すと言っているのと同じで、では、全員が10番以内に入れるのかというと、それは理論的に根本的にできない話なのです。
 やる気があって大規模化した所がよくやっていることに、自分で消費者を見つけて市価よりも高く売るということがありますが、これを日本の全ての農家でやれと言っても理論的に成り立たないことなのです。
 日本の農地を守ることは、競争させて10番以内だけを救うことではなく、普通に頑張る100人を100人とも救うことでしかできないことだと私は思います。
 そうしてまで、農地、つまり田舎を守るべきなのか、そこを国民が判断しなければならないのだと思います。そこまでする必要はないとなれば、田舎の復活は無理ということだと思います。