兵庫県宍粟市千種町の豊かな自然に抱かれてのびのび育ったニワトリと有精卵

 
2011.01 『現代農業』への投稿文 2011年3月号掲載
『競争させられる現状にNOを!! みんなで真実を伝える手段を作ろう!!』

 年末に『TPP反対の大義』を読ませて頂きまた。とても勉強になりました。企画をされた農文協、執筆者の先生方には心より敬意を表します。TPP反対の思いは多くの方が書いておられますので、私は、その次のことについての思いを少し書かせて頂きたいと思います。

 私は勿論、TPPには反対、食糧自給率はもっと向上を、と思う者です。しかし、テレビ、大新聞等のマスコミではこれとは逆の論調がまかり通っています。残念ながら、この『現代農業』も『TPP反対の大義』も、読者数は国民全体から見ればごく少数でしょう。

 何とか、真実をより多くの人に知ってもらう方法は作れないでしょうか。

 マスコミが流す情報は、巨大輸出企業の論理ばかりです。農業に関しても「強くなるには規模拡大しかない」「やる気のない農家には補助を出すな」「過保護が日本農業を衰退させた」・・・。

 私の住む町(人口約4000人の中山間地)の総耕地面積は418ha。総枚数6830枚(圃場整備は勿論すんでいます)。一枚平均6.1a。財界等がいう「少なくともEU並に」だと16ha/戸、つまり1軒で266枚。できるはずがありません。自民党時代に言っていた4ha/戸にしても65枚。超条件のいいところしかできない話なのに、さもそれをしない者が悪いように言われます。

 規模拡大をしたくてもできないから、他で稼いでそれをつぎ込んで小さな田畑を維持してきたのです。やる気があるからそうまでしてきたのです。

 日本農業が過保護でないのは、上の本などで多くの先生が書かれているとおりでしょう。

 このように、現実とは正反対のことばかりがマスコミで流されています。だから、私の知人なども「農家はいいよね、補助金いっぱいもらうから」とか、「農業でもちゃんとやれば食べていけるんでしょ」とか、「輸出をねらったらいいんと違うの」とか平気で言ってきます。

 『TPP反対の大義』などに書かれてあることをいかに、わかりやすく多くの国民に知ってもらうか。伝えられるか。それがこれからの最大のテーマだと思うのです。

 例えば、都会の電車の車内広告の見出しに「食っていけない農家の現実」「規模拡大論の欺瞞」「『国益vs農業保護』のわな」「アメリカの食料戦略」・・そんな文字を並ばせる方法はないでしょうか。

 あるいは、小沢一郎も秋葉広島市長も、マスコミの記者会見は拒否してネット上で会見しました。賛否はあるでしょうが、今、マスコミの偏向性が少しずつこうして認識されつつある中で、ネット上で、農についての真実を流す番組をつくっていくとか。

 あるいは、そうは言ってもまだまだ紙は強いです。わかりやすく真実が書かれたチラシを全国の農産物直売所で配る。あるいは、有志によって新聞広告に折り込みとして入れるとか。(私の町の規模だと折り込み料4,000円くらいです。できない話ではありません。)全国同じ日に同じチラシがあちこちで配られる。それも毎月新しい内容で!! なんてことになれば、これはかなり影響力が出てくるのではないでしょうか。

 夢のような話ですが、このような次の一歩に向かわなければ、いくら一部の誌上で論を展開しても、言葉は悪いですが、自己満足に終わってしまいます。

 巨大輸出企業がスポンサーのマスコミに対抗するのは容易なことではないでしょう。
 何とか、様々な農業関係者が、有志の方々が、そして農家が、力を合わせて、新たな情報伝達の方法を作れないものでしょうか。

 そう、このTPPの大津波をきっかけにして、農業関係者がもう一度手をつなぐ道は作れないでしょうか。

 今まで、私達は、知らず知らずに競争させられて来たのだと思います。成功している事例を見せられ「こうすればできるのだ」と。しかし、それは、たいていは「特産品」であったり、「特別な買い手を作り高く売る」ことであったり。

 でもよく考えてみれば、それは構造的に一握りのものにしか成り立たないことだったのです。特産品なんて、全国すべての町や村の数だけあるはずがありません。となり町が同じことをやり始めたら困るようなことを競争させられてきたのではないでしょうか。そうやってバラバラにされてきたのではないでしょうか。

 全員が一番にはなれないのです。「一番にならなかった者が悪い、自己責任」ではなく、「それなりに頑張ればみんな共に生きていける」そうでないとダメだったのです。

 「よそがやってないことは何だろう」そんな発想が多かったのではないでしょうか。それは、ともすれば「自分さえ良ければ」の道であり、結局はお互いの首の絞め合いにもなってきたのです。それを見透かされて、マスコミには、言いたい放題言われっぱなし・・・。

 これをきっかけに、もう一度、農民は「国民の食料を担う存在」として誇りを取り戻そうではありませんか。そして、JAもどこの団体も、広く手をつないで頂いて、いかにして国民に情報を流していくか。それを模索する組織かセンターか、何かを作ってもらえないでしょうか。

 農文協さんに言い出して頂いてもいいかもしれません。『TPP反対の大義』の執筆者には、今度は、一般人でも分かるような言葉で具体的にわかりやすく書いて頂き、それを、いろんなところでいろんな手段で広めていく。動き出せば、きっと、多くの人の協力が得られると思います。多くの人が動き出すと思います。

 それぞれのできることは小さいですが、どこかがそれをまとめて頂いて一つの方向に向けてもらえれば、きっと大きなことができるのだと思います。

 そして、これは、実は、農業の話だけにとどまるものではありません。都会の人の暮らしに余裕がなくなってきたのも、実は、根っこは同じなのだと思います。TPP参加をたくらむものも労働者を搾り取り使い捨てるものも正体は同じです。

 そこのところからわかりやすく説明していかなければ、都会の人の心には入っていかないでしょう。暮らしに余裕がなくなれば、やっぱり安い方がいいと思ってしまいます。ビートたけしがテレビで『TPPで牛丼が50円になるかも』と言っていましたが、「その方がいい」と思うでしょう。

 その上、さきにも書きましたが、巧妙に都会と田舎は対立させられています。そして、今やほとんどの国民は、農を田舎を知らずに大きくなっています。「農家もサボってきたから悪いのだ」「そんなに税金をかけないと維持できない日本農業ならばもう効率のいい外国で作ってもらったらいいではないか」そう思う人の方が多いのが実態ではないでしょうか。

 それに対して、「ならば田舎の者はもう知らん、自給自足で生きていく」なんて怒ってしまったら、それこそがたくらむ者の思う壺なんでしょう。

 蛇足ですが、時々、「食糧危機になっても田舎にいれば食べていける」なんてのんきなことを言う人がいますが、それは違うと思います。そうなれば、農家は供出させられるのです。日本各地で「食料よこせ」の暴動が頻発すれば、法律や憲法なんてすぐにかわってしまいます。農民はそうやって今までずっと搾取されてきたのだと思います。

 とにかく、『いかに真実を多くの国民に伝えていくか』、何とか、その一歩が作れないでしょうか。すでに様々な方が努力されていることとは思いますが、皆さんの志が大きな力になることを願ってやみません。

 兵庫県宍粟市 「いまい農場」今井和夫