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    兵庫県宍粟市千種町の豊かな自然に抱かれてのびのび育ったニワトリと有精卵

 
2011.10.26 「ひよこ」No.243 より
「TPPは農家だけの問題ではありません  
    国民の食料を外国に依存していいのですか」
 

 TPPがいよいよ参加に向けて動き出しました。

 民主党政権は選挙の公約で自給率50%を目指すと言いました。

 TPP参加、関税がなくなっても農業がつぶれない方策として打ち出した農業再生案として、1戸当たりの規模を今の平均2haを20〜30haとする、そうです。

 一体誰がするのでしょう。どうやってそんな面積を耕作するのでしょう。私には想像がつきません。

 机の上だけで、計算だけで出てきた数字でしょうか。

 自民党時代、4ha以上の農家に補助を出すとしてきました。だけど、ほとんどの農家は実現不可能で、結局、実質、農家への補助金はほとんどなしという状態だったのです。

 それで、民主党は戸別所得補償制度を打ち出し、規模が小さくても補助を出すと言いました。それで、田舎で民主党が勝ったのです。

 それが一転、何と20〜30ha。何か笑ってしまいます。

 とにかく、規模拡大が言われます。欧米と比較されます。EU10ha、フランス40ha、アメリカ180ha、オーストラリア3300ha。それに比べて日本の北海道以外は1haです。「だからダメなんだ、努力が足りない」

 ここで、根本的に見落とされていることがあります。

 それは、欧米は畑作。日本はコメ作・水田、その違いです。水田は水平でないとできません。だから、一枚の田んぼの面積も自ずと制限が来ます。そして、一枚一枚水の管理にとても時間がかかります。植えたら収穫までほったらかし、なんていうわけには全くいきません。

 なにより、日本と欧米の気候の違い。

 「日本は草との戦い、欧米は水との戦い」つまり、日本などのアジアの東の方は、雨がよく降り気候もいいので、とにかく植物がよく生える。だから、草もよく生える。草取りが一番の仕事になる。それに対して、欧米は雨が少なく植物が日本ほど育たない。草の心配もいらない。だから、広い面積の耕作が可能。逆に狭かったら収量が見込めない。

 農業再生案として出されたものは、絵に描いた餅。実現できるものではありません。

 第一、おかしいと思いませんか。アメリカは、日本に米や牛肉を売り込みたいのです。そのための関税撤廃です。それに対して、それに対抗するために、かりに大規模農家に限定したとしても、補助金を出してコメ作りが続けられるにようにすれば、それは、アメリカにとって邪魔になることです。間違いなく輸出障壁として、そんな補助金は撤廃しろと言ってくるのです。要するに、農業に関しては、コメや牛肉の輸入しかアメリカを満足させる道はないのです。

 TPPとは、「アメリカのアメリカによるアメリカのための条約」と言われます。

 「農家が足を引っ張る」とよく言われます。TPPが締結されれば、間違いなく日本の農家はつぶれるでしょう。田舎は崩壊するでしょう。荒れ地がどんどん広がって行くでしょう。

 皆さんに考えてもらいたいのは、それは農家だけの問題でしょうか。田舎だけの問題でしょうか、ということです。「農協が反対する。それは農協組織を守るためだ」とか言われます。確かに農協も問題が多いでしょう。しかし、それでいいのですか。食料を外国にゆだねて、それでいいのですか。

 今すでに、アメリカにものが言えないのは、結局、食料の多くをアメリカに握られているからではないでしょうか。

 TPP推進論者は、結局のところ、各国が得意な分野で頑張って、不得意な分野は外国から輸入したらいいではないか。極端な話、農業はなくなってもいいではないか。ということだと思います。

 政府も結局はそうなのでしょう。

 そうでないなら、「食料は国内で確保すべき」と思うのならば、まず、アメリカに「牛肉は輸入しません、コメは輸入しません」というべきです。それは、食料安全保障の観点から譲れませんと。全てはそこからスタートでしょう。

 でもそうはなりません。そして、国民をだますための、農業再生案のようなものを出して、食料を守るフリします。

 TPPは農業以外の様々な問題も指摘されています。

・地方の自治体が地元業者限定で公共事業を発注すれば、それは違反。アメリカの巨大ゼネコンに訴えられれば、巨額の違反金を支払わなければならなくなる。

・日本独自の食の安全基準等は輸出障壁に。

・安い外国人労働者がどんどん入って来て、日本人の給料はますます下がっていく。

・日本への輸出の関税がなくなるので、日本企業は外国に行き、安い労働力で作って日本に輸出するようになる。ますます、空洞化が進む。
 
 今、アメリカを出発点として、反格差社会を訴えるデモが広がっています。「1%が99%の富を奪っている」と。TPPとは、アメリカのための条約と言いましたが、
正確にはアメリカの1%のための条約なんだと思います。アメリカと日本の1%のための条約ではないでしょうか。「1%の1%による1%のためのTPP」

 とにかく、農業の大規模化は非現実。(できるのならばとっくになっています。)それを踏まえて、食料は国内で確保すべきなのか、安い外国に依存すべきなのか。 これは農家だけの、田舎だけの問題ではありません。国民、皆さんの問題だと思います。