兵庫県宍粟市千種町の豊かな自然に抱かれてのびのび育ったニワトリと有精卵

 
2012.2.11 野菜生産組合員へ添えた文
「人のつながり、命のつながりでつくる農業でTPPに対抗     
   
〜夢だけど言ってみたい「若者よ、田舎から日本を作り直そう」〜
 
 時代は本当に大変な状況に進んでいるように思えてなりません。
 あれだけの原発事故を起こしながら、ほとぼりが冷めると、またもとのように原発を進めようとする勢力。
 「社会保障と一体」という目くらましの言葉で実態をごまかして、どうでも実現しようとする一般大衆からの大増税・消費税。
 足もとを見ると、とにかく若者の流出。ほとんどの若者が出て行ってしまう。今や、公務員、役場に勤める者でさえ山崎はもとより、宍粟市外に家を建てる状況。
 後継者がなく、夢を持てず元気が出てこない田舎の現実。
 野菜生産組合もまさにほとんどがそういう状況ではないかと思います。

 どこかで止めないと、どこかで国民が気づかないと、ますます、間違った方向に進んでしまいそうです。
 テレビのスポンサーに名を連ねる大企業、そして、官僚、そのバックのアメリカの大資本、それに取り込まれたテレビ・新聞等マスコミ、そして政治家。
 今やNHKでさえ、いやNHKを筆頭に、マスコミはそのような者達に都合のいい情報をくり返し流し続け、一般庶民に真実を知らせず、誘導し続けているように思えてなりません。
 
 一般庶民、都市も田舎も不景気にあえいでいますが、大企業はこの10年で内部留保を100兆円増やして今や250兆円保有しているそうです。パナソニック、ソニーなど大手家電メーカーが軒並み赤字決算を出しても、それでも株価が下がらないのは、まだまだ大丈夫だ、金は持っていると、分かっている人たちは分かっているからです。
 今、年間所得5000万円以上の人は最低でも5万人いるそうです。億万長者はこの10年で3倍に。日本人の個人金融資産の合計は1400兆円といいます。4人家族とすると、1世帯平均4666万円!!!
 なぜでしょうか。それは、大企業、高額所得者の税金がこの20年あまりで、大減税されたためです。高額所得者の税率は、1989年までは70%でしたが、今は40%。法人税は同年43%が今は30%。税による所得の再配分機能がなくなってしまったのです。
 官僚も天下り、わたりを続けて、退職金総額3億円の人もいる。みんな税金です。
 「天下り・わたりをなくす」と言って衆議院選挙を勝った民主党・野田総理、今は全くそのことは言わなくなりました。
 このようなことは、マスコミではほとんど報道されません。言われるのは、「このままでは年金は破綻する」ばかり。当たり前です。他に使うだけ使って、それで年金に回す金がないだけです。納めてもらうべきところから納めてもらってないからないのです。

 田舎の衰退を憂えるとき、もうこの日本国全体のゆがんだ構造をどうにかしないかぎり、個々の田舎の頑張りだけではもうどうにもならないところまで来ていると思います。社会保障のみならず、田舎に回って来るお金がありません。公共事業にしろ、農家の直接所得補償にせよ、様々な補助事業にせよ、この富の格差をどうにかしないかぎり、田舎も都市も元気を取り戻すことは難しいのではと思います。
 今、消費税が上がれば、私達野菜生産組合にとっても非常にきびしくなって来ます。なぜならば、私達の作る農産物は安売りでは近郊農家に負けます。千種でこそ作ることのできる安全と美味しさで他よりも高く売って遠い不利な条件を克服するしかありません。しかし、消費税が上がれば、そんな余裕のある人はほんとにいなくなってしまいます。

 そして、TPPです。
 「現代農業」という雑誌の今月号の中に、こう書いてありました。
・・・ 全国の農産物直売所数は16,816カ所、年間総販売金額は8,767億円。まだどんどん伸びる、1兆円に迫る勢い。一方、内閣府はTPPに参加した場合、GDPを10年間で2.7兆円押し上げる効果があると政府見解を示した。10年間で2.7兆円とは、年間わずか2700億円。
 そして、TPPによるものは外需による利益。地域を犠牲にして大企業だけの利益。片や、直売所はまさしく内需。地域を豊かにする利益。・・・
 これも、一体誰のためのTPPなのかということです。

 こうした国の動きを語らずに、もう田舎の再興は語れないのではと思います。
 大きな話のようですが、何らかの形で、今の国の政治を考える動きを、それぞれの地域で始めていかなければならないのではないかと思います。大きな話のようですが、日本中のそれぞれの地域でそれが始まれば、国は変わっていくのではと思いますし、それしか方法はないような気がします。

 そして、それと同時に、今できることをやはり田舎は田舎で、千種は千種で始めていかなければいけないのではとも思います。思うのですが、さて何をどうすればいいのか???

 何とか若者たちを農業や林業で呼ぶことはできないでしょうか。やっぱり、千種は、田舎は、農業・林業がなくなってしまえば町自体が成り立たないと思います。

 夢のようですが、何とか、若者たちに田舎にやってきてもらいたい。やっぱり、若い人達がいないと夢は語れません。希望が持てません。やる気が出てきません。今、ほとんどすべての田舎の子供達が出て行ってしまっている状況の中で、少しでもいい、田舎に住み着いてくれる若者たちが作れないだろうか。専業でなくてもいい。農林業に根ざした暮らしをする若者たちを作ることはできないものか。
 行き詰まった都会暮らしの中で、人間らしい暮らし、大自然の中で、自然の息吹を感じながら、大欲を出さず足を知り、人としてまっとうな生き方をしていく。そんな生き方を求める若者たちはきっといるはずです。そんな人たちが集まってくる方法ないだろうか。そんなことをふと考えてしまいます。
 TPPや消費税、これらは、「カネ」でしかものを考えない者達の考えること。経済効率最優先、個人がバラバラで頼るのはカネだけの世界。その物差しで考えるならば、田舎は成り立ちません。そうじゃない、「人のつながり、命のつながり、そして、そこから生まれる喜びのある暮らし」これがTPPに対抗する道であり、田舎復活・日本再興の道だと思います。

 そこで、例えば新規就農を希望する者には、いろんな物を融通していく。家、倉庫、機械、道具、・・・。売り先もみんなで共同で作っていく。そういう地域内のつながり。「ある物は出す。持てる者は出す。」物を出せる者は物を、カネを出せる者は金を、知恵を出せる者は知恵を、力を出せる者は力を。そうして若者たちを受け入れる。これは、カネで作る農業ではなく、人のつながりで作る農業です。作った物の売り先がいる。それならば、みんなで共同の売り場を探す。あるいは、直売所やネットを通じて、直接購入してくれる顧客を作っていく。千種出身者に声かけをどんどんしていく。
 政府や財界は、儲かる農業、強い農業を目指せと言います。輸出できるような農業をと。しかし、これは、どこまでも世の中をカネで考える生き方です。そんなことができるはずもないし、我々が目指すべきはそんな農業ではないはず。外国人労働者を呼んできて安く働かせて成功するような、そんな地域が崩壊するような農業ではないはず。地域を支え、地域に支えられるような農業。消費者としっかりつながった、お互いの健康と暮らしを支え合う関係。人のつながり、命のつながり、それが作る喜びを日々感じることのできる暮らし、そんな農業のはずです。

 田舎は田舎だけではぜったいに成り立ちません。(都会も同じですが。) 食料に関して言えば、「田舎の者は都市住民の健康に責任が持てる食料を責任を持って生産する。都市住民はその田舎の者達の生活を支える」この関係がなかったら田舎は成り立たないと思います。(それなしでは山にこもっての自給自足です。) この信頼関係、この人と人のつながりで成り立つ農業こそがTPPに対抗する道であり、私達の目指す農業なのだと思います。そして、それは、農業だけにとどまらず、今のズタズタにされた世の中を作りかえることのできる道なのだと思います。「人の道に外れてでも生産性を上げて外国にも売る」そんな農業ではないはずです。
 新規就農者だけでなく、私達のこれからの道としても、これしかないと思います。このような信頼関係を持てる消費者を作っていくしか私達の生き残る道はないと思います。
 このことを都市住民に訴えていくしかありません。語りかけていくしかありません。そして、理解してくれる人をひとりでも二人でも作っていくしか方法はないのだと思います。

 でも、どんどんと給料を減らされてきた都市の人達は、そんなことを考える余裕がなくなり、とにかく少しでも安い物をと考えるようになって来ています。これはとても危険なことのように思います。

 話が少し横道にそれますが、私はこう思います。
 都会の人達を低賃金長時間労働に追い込んでいる者達も、田舎から農業を奪おうとしている者達も、実は同じ者達なんです。ざっくり言ってしまえば、自分たちの利益しか考えない大企業・財界であり、外国資本であり、それに群がる者達なんだと思います。
 実は、その者達は、都会と田舎がいがみ合ってくれていた方がいいと思っています。「田舎は補助金ばっかりもらってずるい」「都市の者は安く安く買いたたく」そんな風にお互い、いがみ合ってくれている方が自分たちは安泰なのです。怖いのは手を結ばれて自分たちに立ち向かって来られることです。そうさせまいとマスコミは必死に両者のねたみを誘うようなことばかりを宣伝しているのではないでしょうか。『農家はサボってきた、補助金に頼ってばかり、規模拡大の努力をしてこなかった。・・・』
 真実はそうではないはずです。努力をしても規模拡大を試みても、どうにも農業だけで食べていけないから、他に稼ぎに行って、休日は休まず、草刈り、農作業をしてきたのです。
 ですから、こうしてバラバラにされている都市と農村、生産者と消費者の間を、もう一度、しっかりとむすんで行くことをしなければならないのだと思います。それしか、私達が生き残る道はないと私は思います。
 そうやって、理解してくれる人、連携してくれる人を、一人でも作っていくしか道はありません。どのみち、都会の人達の理解がなければ田舎は崩壊していくのですから。
 しかし、田舎の崩壊は都市住民にとっても、決して人ごとではないはずです。本来は自分たちの問題のはずなのです。だから、情報をきちんと伝えれば必ず都市の人たちは理解してくれるのではと思うし、そう思いたいです。
 そうやって、ゆがんだ宣伝に負けないだけの情報をしっかりと流し、共有し、ともに手をつないで、私達の物を買ってくれる人、買うことによって私達を支援し、千種町を支援してくれる人たちをみんなで作っていくしか方法がないように思います。
 くり返しになりますが、「田舎の者は都市住民の食料・木材・エネルギーを支える、都市はその田舎の人達の暮らしを支える」この関係がなければ決して田舎は成り立ちません。しかし今、その「食料・木材・エネルギー」すべてが外国からでいいとなって来ているわけで、これでは田舎が成り立つはずはないです。しかし、こんなことが続くはずがない。食料を外国にゆだねて国が成り立つはずがない。エネルギーも本来は同じなはずです。

 まあ、そんな夢のようなことを考えて、何とか若者が千種に根付くような奇跡が起こらないものかと夢想しています。「こんな世の中ではだめだ、もっと人間らしい暮らしがしたい」そう思う若者はきっといるのではと。。。
 
 夢の続きで、もうひとつ、田舎の可能性として、最近、にわかに、『エネルギー』が出てきたのではないでしょうか。
 小水力発電、太陽光発電、地熱発電、風力発電・・・。特に千種町などでは、小水力や風力でしょうか。そして、熱源としての間伐材やバイオマス。東北などでは、これで公共施設に熱供給しているそうです。
 電力・エネルギーが自給できるようになれば、何も千種から出て行く必要はありません。逆に、人の流れが海岸から奥地へとなっていくでしょう。
 これは、これからの田舎の大きな可能性であることは間違いないと思います。そのためには、いろいろと国の仕組みを変えなければなりません。マフィアと呼ばれる原子力村の解体も必要です。
 こうして、「食料・木材・エネルギー」の基地となり得るならば、田舎は逆に非常に可能性のあるところになって来るのです。人々の既成の考え方を変え、政治を変え、国の仕組みを変えることでこれはできることなのです。大きなことのようですが、とても夢のあることです。
 こんな夢を追っていれば若者たちは集まってくるのではないでしょうか。

 何事も、思うようにいきませんが、そんなことを思いつつ、また今年も皆さんといっしょに力を合わせて、できることからやっていきたいと思います。
 そして、少しでも、半歩でも、夢を持つことに進んでいければ、せめて気持ちだけでも夢を追い続けることを忘れてはいけないと思っています。ついつい、日々の忙しさ、そして、現実の夢のなさ、ニュースの圧力の中で、めげてあきらめてしまいがちなのですが。

 とにかく、千種の農産物は良質で美味しいです。皆さんの作る農作物はどこよりも安全で美味しいものなのです。千種ってそんな地域なのです。それを励みに頑張りましょう。